研究の道具箱:山田晴通

韓国/朝鮮語固有名詞等の日本語表記について


 自分自身がほとんどできない言語について、もっともらしいことを綴るのは、大変気が引けるものです。しかし、恥をさらすことを承知で、自分の提供しているページにおける韓国/朝鮮語の固有名詞(地名や人名など)等の日本語表記について、基本的な考え方を示しておきます。

 韓国/朝鮮語は、正書法が確立されているため、原則的には、基本的には綴り字を転写すれば、ある程度まで近似した日本語読みを得ることができます。しかし、子音も母音も、日本語より数多くあり、それぞれを適切に日本語に置き換えたとしても、日本語から原綴りを知ることはできません。また、子音の発音は前後の母音・子音の連続によって、発音が変化することもあります。
 閉音節の最後の子音(終声)を日本語でどのように表記するかは、判断が難しく、既存の資料における日本語表記にもばらつきがあります。これは、例えば、「北」にあたる puk という音節を「プ」とするか、「プク」とするか、という問題です。単音節なら、終声を示した「プク」が好ましいでしょう。しかし、他の音節が続く場合はちょっとやっかいです。例えば、「北漢江」には、「プハンガン」、「プッハンガン」、「プッカンガン」、「プクハンガン」といった表記が考えられます。音を重視すれば、「プッカンガン」が近いようですが、ここでは、原綴りが連想されやすいように「プクハンガン」を選ぶのを原則としています。しかし、慣用が定着しているものなど、この原則から外れる例も出てきます。例えば、「木浦」は「モクポ」よりも「モッポ」の方が一般的であり、発音の感じもよく表現されているように思われます。

 (南で用いられる)韓国語と(北で用いられる)朝鮮語は、基本的には同じ言語ですが、正書法と一部の子音の発音に違いがあります。最大の相違点は、語頭のr音の扱いです。もともと韓国/朝鮮語では語頭のrは、脱落するか、n音に置換されるものですが、北では、このr音を正書法上に位置づけ、また学校教育を通じてr音の発音を普及させました。このため、「羅津」は、南側の発音では「ナジン」となり、「Najin」とも表記されますが、北では「Rajin」と表記し、「ラジン」と発音しています。ここでは、北関係の固有名詞は語頭のr音を尊重するようにいたします。

 なお、半母音は、「先行する子音に対応する音の行のイ/ウ段の文字」+「母音に対応するア/ヤ行の音の小文字」によって表記します。例えば、「光州」は「クワンジュ」、「クヮンジュ」、「クアンジュ」などの表記が考えられますが、ここでは「クァンジュ」となります。

(1996.08.掲出/1998.05.加筆)
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